Our story

 私たちは、より自然と寄り添った生活や、みずからの手で健康的な食物をつくることができる暮らし方を求めて、2016年、ここ新潟県上越市大島区の田麦集落に移住をしてきました。平成の市町村大合併より以前は「東頸城郡大島村」と呼ばれたこの地域は、昔ながらの家並みの農山村集落を中心に、形の不揃いな棚田、天然のブナ林や植林された杉を中心とした里山の風景がいまでもそこここに残っています。

 私たちが暮らす屋号「小南(コミナミ)」の家は、この地域では一般的な造りの伝統的農家住宅。その昔は写真屋さんも営まれていたそうですが、いったん都会の人の手にわたり、その後ふた冬ほど空き家となっていたところに私たちがやってきました。宿に向いていそうな家の造りとサイズ感、道をはさんで目の前に田んぼというロケーションの良さに惹かれた上に、地元の方々からの後押しもいただいて、購入を決意。まるでジブリ映画『となりのトトロ』のように、自動車に家財道具を満載で越してきて、その後一年以上かけて就農&農家民宿開業のための準備をおこない、2017年の春からコメ作りを、そして同年11月からは念願だった農家民宿の営業も開始することができました。

The house of Kominami, Jan. 2016

消えゆく文化と伝統を繋ぎたい。

 現在は夫婦ふたりと2020年春に生まれた娘の三人で、借りた田んぼ15枚(約1ha)でのコメ作りと、小さな農家民宿で生計を立てています。けして金銭的に余裕のある暮らしではありませんが、自分たちで育てた米や野菜が倉庫を満たし、冬の燃料にと薪を割り、ちょっとした空き時間にはちかくのブナ林にお散歩にでかけ、農作業がひと段落した日はちょっと贅沢に近場の日帰り温泉へ。そんなライフスタイルを送れることに、心からの幸福を感じています。

 しかし私たちが暮らすここ田麦集落はこの半世紀で人口が半減。田麦だけではなく、上越・十日町・柏崎のちょうど中間に位置する山のなかの集落は、日本の高度経済成長や社会の工業化を後押しするように若者を都市部に送りこみ、米価の下落や住民の高齢化・人口減少とともに急速に活気を失っていきました。

 お祭りをはじめとした地域の伝統行事から、道普請などの日常作業。

 一寸の山の斜面をも惜しむように開墾された段々の棚田。

 縄ないや炭焼きなど、田んぼや里山から得られる資源をつかった「持続可能な暮らし」の技術の数々……

 世界中で「サステナブル(持続可能性)」という言葉に注目が集まる時代が来ても、平均年齢が65歳を超える中山間地域では、もはや我ここにありと声を上げる力すら無くなってしまっているのが現実です。

 私たちは、私たちの農産物や農家民宿から生活のための所得を得たいのももちろんですが、同時に “いまの世の中だからこそ再発見してもらいたい、日本の農山村が秘めた可能性” をより多くの人々に伝えていきたいとも願っています。

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warazaiku

私たちのストーリーを、あなたにも。

 私たちの次なる目標は、私たちが経てきたこの移住ストーリーを、同じように地方移住への興味があるかもしれないあなたにも体験してもらうことです。

 非農家出身。限界集落へのIターン。いまどき儲かるわけないコメ農家……

 こんな条件にも関わらず私たちがこうした暮らしを始められたのは、多くの先輩移住者たち、受け入れてくれた地元の方々の手引きや指導、国や市の助成金とその面倒を見てくれる行政や農協の方々があってのことでした。

 近隣地域には私たちの他にも、中山間集落に移住し、それぞれが理想とする半農半Xな暮らしを実現している人が何人もいます。お味噌にお漬物、伝統生地を使ったもんぺ、無農薬の茶葉栽培、珈琲豆の焙煎、伝統ある和紙工房など、それぞれの特技を延長した生業 “X” を興し、育て、あるいは継承し、それがまた地域の魅力にもつながってきています。

 興味のある方は是非お気軽に足を運んでみてください。その旨事前にお申しつけいただければ、こちらもそのつもりでお迎え/ご案内などさせていただきます。

(2022.11.20)

株式会社shabell様運営のサイト「niigatabase」にて、私たちの移住・就農ストーリーが紹介されました。

記事を読むには こちら から!


 また(専業でも兼業でも)コメ農家になってみたい!または関心がある、という方は、私たちを農業研修生として受け入れて下さった 星の谷ファーム の天明伸浩さんが書いた『転身!リアル農家:等身大の新規就農』(2010年 新潟日報事業社)も是非ご覧になってみて下さい。

 発行年は十年以上前ですが、移住就農の美しいイメージストーリーや甘いお話ではなく、就農への経緯や考え方、コメ農家の「お金」の話、配偶者からの視点など、細部まで子細に書かれていてとても参考になると思います。

 上記の天明さんや、私たちも移住前から大変お世話になっている地元の小山さんらが中心となって活動している「上越やまざと暮らし応援団」では、日帰り見学から家や田畑の物件探し、定住後の交流まで、幅広く柔軟に移住希望者のサポート活動を行っています。新規就農者や地域おこし協力隊員など、ここ数年で4組(私たちを含む)の移住サポートの実績ができました。

 窓口はどこからでも!まずはお気軽にご一報ください♪

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